2015年12月24日木曜日

【学問のミカタ】聖書にみる「補完性の原理」
~まちづくりにも通じます~


みなさんこんにちは。メリークリスマス♪

大学は既に12月22日で今年の授業が終了しています。今日は学内がとても静かです。

そして、今日はクリスマスイブですね。思い思いのクリスマスを過ごすことでしょう。しかし先週のゼミ研究報告会のときに学生さんとお話した感じでは「特に予定なし」「バイト」という人が多かった気がしました(笑)現法さんも普通に忘年会です。
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さて、今日は【学問のミカタ】シリーズ。テーマは【クリスマス】。

【 学問のミカタ:テーマ『クリスマス』】

今回は羽貝正美先生(行政学)が記事を寄せてくれました。


「補完性の原理」・・・
なるほど、羽貝ゼミはこの原理のもと、先日の「ゼミ研究報告会」では、皆で補い合いながら立派なゼミ報告を行いました!ではどうぞ。

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2015.12.16ゼミ研究報告会
「小規模自治体における少子高齢化と地域活性化
―山梨県市川美郷町の取り組みを手がかりに―」

1225日。毎年、必ず訪れるクリスマス。この季節に人は何を思うのでしょうか。街のそこかしこに飾られるイルミネーションの美しさに感嘆の声をあげる人もいるでしょう。友人同士、また家族の中で、楽しく語らいながらプレゼントを交換しあう季節の到来を実感する人も多いことと思います。何となく気忙しい師走に、「光陰矢のごとし」の言葉を思い起こしながら過ぎし1年を振り返る人も少なくないでしょう。入試本番を控えて緊張と睡眠不足の続く受験生にとっては、短い時間かもしれませんが、緊張感から解放され英気を養うひと時になるのではないでしょうか。また、そうであることを願いたいと思います。

言うまでもなく、クリスマスは「イエス・キリストの降誕を祝う日」。キリスト教会につながる人々にとっては最も大切な日です。けれども、およそ二千年前のこの出来事は、その後の歴史を通じて、社会全体に重要なメッセージを途切れることなく発信し続けているように思います。そのひとつが「補完性の原理(原則)」というものです。「補完性」を意味するSubsidiarityという英語をカタカナで表記して、「サブシディアリティ」と表現することもあります。
では、この「補完性の原理」とは何を意味しているのでしょうか。この原理は『聖書』の中で繰り返し語られていますが、そのひとつに次のような一節があります。

「体は、一つの部分ではなく、多くの部分から成っています。・・・目が手に向かって「お前は要らない」とは言えず、また、頭が足に向かって「お前たちは要らない」とも言えません。それどころか、体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです」。(『新約聖書』、コリントの信徒への手紙一、1214節、21~22節)

この一節を、現実の社会を念頭に平易な言葉で言い換えるとどうなるでしょうか。「私たちの生きる社会は、互いに補い合って初めて共存・共生が可能となる。小さく、弱い主体が存在することの意味や価値を忘れてはならず、私たちが小さく、弱い存在に気づき、支えようとするとき、私たちもまた小さく、弱い存在に支えられる者になる」。本質的なメッセージはこのようにまとめられるように思います。

この原理あるいはメッセージは、やがてひとつの社会哲学や社会思想となって、現実社会のさまざまな課題を念頭に唱えられ、実践されることになりました。歴史的に早い時期にその意味を考察した論者としては、アリストテレスやトマス・アクィナスといった古代や中世に活躍した哲学者の名前が知られています。また、20世紀前半に、はっきりと「補完性の原理」という言葉を用いて論じた最初の人物として、ローマ教皇ピウス11世の名前も紹介されています。

さらに時を経て、1992年のマーストリヒト条約に象徴されるように、欧州統合を実現するための思想的な基盤となったこともつとに知られるところです。


日本においても、「市町村優先の原則」(市町村が適切に遂行できる事務はいかなるものも、都道府県または中央政府には与えられないという意味において、市町村が第一の優先権をもつ、という原則)を含む『シャウプ勧告』(1949年)や、その理念を継承するかたちで、半世紀後に実現する地方分権改革(2000年)に補完性の原理をみてとることができます。さらに解決すべき課題はあるにせよ、まさに今、私たちが生きている現代社会あるいは国際社会のなかで、この原理が現実に働いているということがわかる事例ではないでしょうか。


2015.12.16ゼミ研究報告会
「都市化社会における少子高齢化の現状と課題
―東京都江東区の取り組みを手がかりに―」
かつて、1960年代の高度経済成長期に「大きいことはいいことだ」というCMがありました。その後、社会も、人々の意識も大きく変化しています。少子高齢化や人口減少という大きな流れの中で、環境、福祉、消費、労働などに関わってさまざまな課題が浮上していますし、国際的な紛争の解決や国際間の連携・協力のあり方なども課題になっています。実に不透明で、出口が見えない状況といってもいいかもしれません。政治、経済、社会のあらゆる側面で、内外に多くの問題を抱える現代日本において、「大きいこと」だけでは解決できないことが多いことも事実です。
2015.12.16 羽貝先生
【ゼミ研究報告会打ち上げにて】

小さく、弱い立場にある者(あるいは主体)を他者や社会はどう支えたらよいのか。どのような連携・協力のあり方やルールが必要なのか。いうまでもなく、社会は、置かれている条件も価値観もそれぞれに異なる多数の人々の集合体です。そうした社会の現実を前提にしたうえで、私たちは何を選択し、どのような社会を実現していくことが求められているのでしょうか。答えを見出すことはけっして容易ではありません。けれども、「互いに補う合うこと」がそれを探っていくためのひとつの糸口になることは確かでしょう。


「補完性の原理」というメッセージ。これから大学で広く、深く学ぼうとする皆さんにとって、クリスマスの大きなプレゼントではないでしょうか。

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羽貝 先生ありがとうございました。

ではまた次回!

<次回からいよいよゼミ研究報告会
の写真を掲載していきます>

2015年12月10日木曜日

今年もやります、現代法学部ゼミ研究報告会!
~タイトル全発表~


皆さんこんにちは。
今年の冬はあったかいとのことですが、
それでもやはり冬、毎日寒いですね~。

さて、皆さんお待たせしました!
今年のゼミ研究報告会は、12月16日(水)14:40から、6号館で行います。
今年は、13ゼミ、36団体が、ゼミでの研究成果を発表します。

去年までは1号館でしたが、参加ゼミが増え3階と4階に分かれてしまったため、移動が大変だったとの意見があり、今回は6号館に場所を移しました。

そして、昨日ゼミ研究報告会の発表タイトルが出揃いました。発表します~

クリックで拡大


「就職活動とゼミ」は2部屋に分かれて行います。
現代法学部の先輩たちに、気軽に質問することが可能です。

1部屋目:公務員内定者
 特別区(東京23区)に内定した学生2名と、警視庁に内定した学生にフリートークをしてもらいます。

2部屋目:企業内定者
 メーカー、証券、銀行などに内定した学生にフリートークをしてもらいます。


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12月2日(水)ゼミ研究報告会打ち合わせの様子。

13ゼミの代表34名が集まりました。
今年の実行委員長 礒野ゼミの久保くん
率先してお片づけをしてくれました。

福祉系ゼミ同士で打ち合わせ?!


4名中1名しか現れなかった村本ゼミ、発表は頑張ってくださいね!
2度目の参加、藤原ゼミ 数少ない政治学ゼミです



久保ゼミ中村君と渡邉さん 中村君は懇親会の司会に決定です

一生懸命書いてます

う~ん、頭を悩ませてます

何かひらめいたようです

「私も写りたい、現法さん写真とって」
桜井先生おちゃめです

集まった皆さんが一生懸命書いているのは何かと申しますと、


各ゼミの紹介文(どんなゼミ?通常のゼミ活動)でした。これは、当日、ゼミパンフレットとしてお渡しします。


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多くの皆さまのご参加をお待ちしています!

現代法学部一同より。

ではまた次回!

2015年11月23日月曜日

【学問のミカタ】毎年学園祭に参加するゼミ・・・その名も西下ゼミ!

西下ゼミ
仮設住宅最後の夏祭り(盆踊り)休憩時の記念写真


皆さんこんにちは。

だいぶ寒くなってきました・・・学内は紅葉が終わりかけています。ちょうど公孫樹が綺麗ですね。
綺麗な公孫樹も、お掃除の方にとっては大変なようです。雨が降ると落ち葉が水を含み、とても重くなり、掃きにくくなるとのこと。


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さて、今日は学問のミカタ、テーマは【文化祭】
西下 彰俊先生が寄稿してくださいました。

【過去のブログ記事へ】高齢期の福祉向上を目指して~西下彰俊先生にインタビュー~第1回
【過去のブログ記事へ】高齢期の福祉向上を目指して~西下彰俊先生にインタビュー~第2回
【過去のブログ記事へ】私たちのゼミ合宿を紹介します!~西下ゼミin仙台 2泊3日~
【過去のブログ記事へ】~海と兵士~ボランティア活動を通じて知る『絆』


西下ゼミは、毎年東京経済大学の学園祭である【葵祭(あおいさい)】で、展示発表を行っています。
今年葵祭で発表したゼミは、全学で2団体しかないので、長年葵祭に貢献している数少ないゼミのひとつと言えましょう。

【葵祭実行委員会ホームページへ】展示団体紹介

ではどうぞ。

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大船渡市盛町で夏祭りボランティア活動を行った
際にいただいた、山車の一部を葵祭に展示しました。

学問のミカタ 11月『大学祭とゼミ展示』          
現代法学部 西下彰俊
            

もう11月も下旬に入った。
<に・し・む・く・さむらい>のサムライの月である。
さむらいは士と書き、十と一で構成されるから11月のことを指している。
に・し・む・く・さむらいとは何か。そう、月末が31日でない月(小の月)の組み合わせである。2月、4月、6月、9月そして11月。
と、小学校の担任のK先生が語っていた。

さて、今月のお題は、文化祭。何故、このお題なのだろうか。11月は文化の日があるからだろうか。高校までは文化祭なのだろうが、大学では学園祭または大学祭。高校時代の文化祭には、あるお伝えしたい思い出があるのだが、このブログにはふさわしくない。

ということで、本学の葵祭という学園祭と私のかかわりについて、話を進めさせていただく。小生は、名古屋の前任校の時代から大学祭のゼミイベントを毎年ではないがやっていた。その流れもあり、本学着任後大学祭の中でゼミ展示を行っている。毎年欠かさず葵祭に展示団体として参加しており、今年で12回目となった。

西下ゼミでは、IT全盛のご時勢に、模造紙に展示内容を貼り付けるという頗るアナログな展示をしている。継続生を軸にゼミ生25人を5グループに分け、グループ内でテーマを設定し、グループワークしながら、大学祭前日の準備の日までに完成させる。

3日間のゼミ展示期間を、1000133013301600のシフトに分ける。どの曜日、どの時間帯にお客様がいらっしゃりご質問があっても対応できるように、5つのグループのメンバーが必ず一人入るシフトにしている。また、準備の日と後片付けの日もゼミメンバーがどちらかに必ず入るシフトを組んでいる。3日間で200程度のお客様に展示内容をご覧いただいている。毎年お越しいただく常連様は、正門前の『竹茂食堂』のご主人(本学OB)。ゼミ展示のポスターも毎年食堂内に掲示していただいている。また、常陸太田市のS様は、車椅子を利用されているが、毎年遠路お越しいただいている。

写真1 山車の様子
例年のゼミ展示では、スウェーデン、韓国、日本の高齢者ケアを取り上げるグループがあるのだが、今年は「ボランティア実践と考察」に関する展示オンリーであった。今年のゼミ活動の最大の特徴は、8月上旬、明治大学のSゼミと連携して、岩手県大船渡市盛町の夏祭りの準備ボランティアを数日間行い、夏祭りの本番にも参加したことである。11の町内会ごとに山車を作り山車とともに練り歩くという経験はなかなかできないことである。ほとんどのゼミ生がこの夏祭りボランティアに参加した。

仮設住宅の皆様と思い出の一枚
翌日早朝バスに乗り、明治大学有志学生5名とともに仙台市若林区卸町5丁目公園仮設住宅へ。2012年から毎夏うかがい、環境整備型ボランティアとコミュニケーション型ボランティアを実践している。今年は仮設住宅の最後の夏祭り。皆で準備し祭り本番にも参加した。翌朝、これも2012年から毎夏うかがっている仙台市太白区あすと長町仮設住宅で環境整備型ボランティア。午後は、仙台市宮城野区仙台港背後地仮設住宅での夏祭りの屋台ボランティア。この日も、明治大学生有志が参加してくれた。

今年は、葵祭でゼミ展示をするという毎年のルーティーン(五郎丸!)に加え、葵祭翌日の後片付けの日の午後から、国分寺市内の高齢者複合施設ミンナでの2回目の音楽ボランティアを実施した。本学から「国分寺周辺地域活動助成費」の補助金を受け9月から実施している。来年1月、2月にも同じ施設で音楽ボランティアを実施する予定。毎回8曲程度を入居高齢者の皆様と歌う。ゼミ生が曲に合わせて発するカスタネットとトライアングルの音色を、皆様に懐かしんでいただいている。

被災地と地元の両輪で実践するゼミのボランティア活動。ボランティアの輪をさらに拡げるために、2016年度『ボランティアのゆくえ』という特別企画講義を展開する。


今年は、夏休みボランティア4か所、音楽ボランティア4回、葵祭ゼミ展示、西下ゼミ同窓会とイベントが目白押し。最後は、ゼミ論提出と『カレードスコープ』という名のゼミ論集の制作。<ゼミする東経大>の一つの形を実践している。


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西下先生ありがとうございました。

ではまた次回!

2015年10月22日木曜日

【学問のミカタ】訪問販売について 
~ハロウィンで起きた事件から考える~

皆さんこんにちは。
10月も下旬になり、なんだか肌寒くなってきましたね。
正門から続く桜並木は、今年は紅葉しないで葉が散り始めています。ちょっと寂しい感じです・・・
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さて、今日は【学問のミカタ】。テーマは【ハロウィン】

実は、「このテーマ、書きにくい!」ということで、なかなか担当してくれる先生が見つからなかったんです。そんなときに村本武志先生が名乗り出て!?くださいました。先生ありがとうございます。


今年の1年生は、全員「民事法基礎」で先生の授業を受講しています。2年生以上は、「民法(契約法)」「商品安全と法」などで先生の授業を受けたと思います。パワポを駆使したすごいレジュメを作っていますよね。消費者法にかんするブログも運営していますので見てみてください。(注意:英語です)

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先生が書いてくださった事件は、皆さんは若いから知らないかもしれませんが、当時はかなりワイドショーで取り上げられました。現法さんも「アメリカって恐いな」と思ったことを覚えています。

ではどうぞ。
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法プロフェッショナルプログラム説明会

ハロウィーンと聞いて思い出すのは、カボチャ。じゃない、米国で留学中の高校生が射殺された痛ましい事件。19921017日午後8時頃、米国ルイジアナ州バトンルージュ市で、AFSで交換留学していた名古屋の高校生が、ホストブラザーと一緒にハロウィンパーティの会場である友人宅へ。白いタキシードに黒いズボン。同行者は、首にギブスを付け、頭と足に包帯を巻いた病人の格好。しかし訪れた先は、番地が似ている他人宅。ハロウィンの飾り付けもあり、間違いないと思い玄関ベルを押したが、応答無し。横手のカーポートに回り込むと、ドアがバタンと閉じる音。そこで二人は、一旦は車道に戻ったものの、カーポートが開いたことから、カーポートを通りドア方向へ。ドアのそばには、居宅男性が銃を構えていた。男性は「Freeze!」と叫んだものの高校生は聞き取れず、「パーティに来た」と言い、家に入ろうとした矢先にマグナム44口径の銃弾が高校生の胸を貫通し、死亡。

居宅男性は傷害致死罪で起訴されたが、弁護人は「玄関のドアが鳴ったら、誰に対しても、銃を手にしてドアを開ける権利がある」と弁論し、199353日、陪審評決で無罪。しかし、男性に対する民事訴訟(不法行為による損害賠償請求)では、1996112日、ルイジアナ州最高裁が、男性過失を認め653000ドルの賠償義務を認めた。

ハロウィーンは、111日のカトリックの聖人の日である万聖節(All-hallow)の前の晩、1031日が当日。カボチャの中身をくりぬいて中にろうそくを立てた「ジャック・オー・ランタン」をつくったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して、近くの家々を訪れ「Trick or treat(お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ)」と唱えてお菓子をもらったりする風習。

欧米では周知の事柄で、訪問される側も、特に不審がられることはないかもしれない。米国郊外居宅は、高い塀があるわけではないし、生け垣でぐるりを囲まれているわけではない。人の家に入り込むについて物理的な障害は、日本に比べて少ないし、当日は心理的な障害もない。ハロウィーンの日に「お菓子を貰いに居宅に入り込む」側は、「ハロウィーンだから、良いんじゃないの」として、立ち入りについて居住者に推定的な承諾がある、なんて主張することになろう。

しかし、だ。おどろおどろしい衣装に身を包んだ怪しげな人物が、突然、玄関に現れたらどうだろうか。ハロウィーンを知らない人もいるだろう(私もよくは知らない!)。ハロウィーンの日だということを忘れている人もいるかもしれない。知っていても、ハロウィーンに名を借りた盗人、強盗かもしれないと思っても不思議じゃない。

人の居宅に勝手に張り込むことは、刑法上は、住居侵入罪に当たる。目的は問われない。泥棒さん目的であろうとなかろうと、人の住居に入り込めばそれだけで犯罪となる。銃規制が緩い米国では侵入者が銃を携帯しているやもしれない。対抗上、見知らぬ訪問者に銃を向けることは決して異常な対応ではなかろう。留学中の高校生でうまくコミュニケーションが取れない場合にはなおさらだ。威嚇して立ち去らない侵入者に発砲した場合に正当防衛が主張されないとも限らない。

米国には「personal sanctuary(個人的聖域)」という概念がある。「自宅」は特別な空間だ。人の家を、断り無しに訪問することは、これを不当に冒すものだ。住んでいる人のプライバシーや平穏な生活が脅かされるおそれがある。そうでなくたって、応対の時間が盗まれる。居住者は、このような利益や権利を守る権利、見ず知らずの他人に応答する時間を取られない、盗まれない権利があるはずだ。これは、憲法上は13条の幸福追求権で基礎付けられるだろうし、不当な侵害がされそうであれば人格権(民法709条)や所有権に基づく物権的請求権で差し止めを求めることだってできる。

いま、「自宅において営業目的の勧誘を受けたくない消費者が,予めこれを示すことにより勧誘を免れうる制度(Do-Not-Knock制度)」、「私用電話において営業目的の勧誘を受けたくない消費者が,予めこれを登録することにより勧誘を免れうる制度(Do-Not-Call制度)」が消費者から主張されている。これは、訪問販売・電話勧誘販売を禁止しようというものではない。私的生活空間に関する消費者の自己決定を尊重して欲しい、というささやかな願いだ。

訪問販売や電話勧誘販売、いいんじゃないの?便利なんじゃないの?という人もいるかもしれない。訪問販売に関する消費者庁の調査では「勧誘を受けた結果、契約を締結したことがあると回答した消費者(訪問勧誘で105 名、電話勧誘では129 名)のうち「契約してよかった」または「契約してよかったと思う場合の方が多い」と回答した割合については、訪問勧誘で51.5%、電話勧誘では43.5%とされる。規制反対論者は、これを理由に「やっぱり必要」と声高に主張するかもしれない。しかし、忘れちゃ行けない。「訪問販売を全く受けたくない」と回答した方が96.2%,2000人に対するアンケートのうち,契約した人は訪問勧誘で105人,電話勧誘で129人でしかない。「契約してよかった」というのはさらにそのうちの半数。これはアンケート対象者の5%程度でしかない。これは、96%が迷惑だと感じているデータに等しい。ちなみに、全国消費者団体連絡会の調査では「訪問販売を迷惑に感じる」と回答した方が96.3%に上る。反対論者の言説は、基礎比率をあからさまに無視したミスリーディングにほかならない。

突然の訪問販売は、育児・介護・療養・睡眠・受験などの時間を妨げる。誰かわからなけりゃ、玄関に出るために、パジャマだって着替えなければいけないし面倒だ。訪問販売をする方には、営業の自由があると声高に言うだろう。

たしかに過剰な制約なく営業を行うことの自由は重要なものだ。しかし,営業の自由のために他の全ての権利・利益が譲歩を余儀なくされるというものではなかろう。たとえ表現の自由であっても,建物管理者の管理権や私生活の平穏の利益から制約を受けることは,平成20411日の最高裁判決が明らかにする。2015324日に「消費者基本計画」(閣議決定)は,「勧誘を受けるかどうか、消費行動を行うかどうか、どの商品・サーピスを消費するかについては、消費者の自己決定権の下に位置付けられるものと考えられる。」と述べる。「営業の自由」などの経済的自由権は,表現の自由よりもより柔軟に制約を受ける。消費者庁での議論の中で、事業者の「営業上の自由というのは憲法上の権利だから,憲法上の権利ではない平穏生活権に優先する」という趣旨の発言をした輩がいたそう。驚くべき無知蒙昧だ。訪問される側にパジャマを着替えることを強いる権利はない。日常生活で個人の時間の使い方は(権利として)尊重されるべきだ。


だからといって、ハロウィンでのお菓子ねだりのお宅訪問はダメよ、というわけではない。おかしおねだりは、幸福追求権の一つだ。営業の自由ではない。そこんところ、ヨロシク!

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村本先生ありがとうございました。

アメリカでは自宅は【特別な空間】とのことですが、なぜ自宅に押しかけるハロウィンという文化があるのか不思議ですね。
先生は「消費者法」を専門とされています。知らない人が自宅を訪ねるという共通点から、訪問販売についてもお話くださいました。


ではまた次回!

2015年10月1日木曜日

輝く元現代法学部生!第2弾 
~市役所に勤める大谷さん~

2年前に卒業した大谷さん

みなさんこんにちは。

10月に入りました。早いですね。今年もあと3ヶ月です。
1年生の皆さんに、「最近興味を持ったニュース」を聞いたところ、いろいろな回答があり驚いています。また近いうちに話題にしたいと思います。

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さて、今日は懐かしい卒業生が遊びに来てくれました。

彼女の名前は大谷さん。現代法学部を2年前に卒業しました。
学生時代は葵祭実行委員会(学園祭の実行委員会)で活躍していて、現法さんが知り合ったのはこの頃です。「ずいぶんしっかりした下級生が葵祭に入ったな」という印象でした。

ゼミは羽貝 正美ゼミに所属していました。羽貝ゼミは行政学のゼミです。

【過去の記事へ】私たちのゼミ合宿を紹介します!~羽貝ゼミ in 草津 1泊2日~

就職活動は、一般企業と平行して進めていて、確か夏休み前にSE職の内定が出ていましたが、「やはり公務員を目指したい」と最後の最後まで頑張り、見事希望する市役所に内定しました。

現在は関東のとある市の職員です。

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現代法学部に入学する学生さんは、とにかく公務員希望者が多いです。

公務員といっても地方上級、国家、警察、消防・・・と多岐にわたっていますが、今回はせっかく来てくれたので、大谷さんに市役所職員について、いろいろと質問してみました。ではどうぞ。

【過去の記事へ】働く元現代法学部生!~大学職員になった浅岡君~

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当時の葵祭実行委員会メンバー 大谷さんはどこに!?
現法さん:大谷さんが勤める市役所は何名ぐらいの人が働いていますか?同期は何人?

大谷さん:約1000人が働いていると思います。同期は30人ぐらいで、入職時22歳~30歳でした、中途の方も多いです。私のときは、中途職員が17名でした。

現法さん:中途職員の方はどのような経歴なのですか?

大谷さん:銀行、不動産、SE、服を作っていた人、就職したことがなくずっとアルバイトだった人・・・と多岐にわたります。中途の方の配属先を見ると、前職が少し考慮されているかもしれません。

現法さん:大谷さんは、今はどんな仕事をしているのですか?

大谷さん:私は市民課の戸籍係で、出生、婚姻、死亡、養子縁組などの戸籍関係を担当しています。とてもやりがいがあります。

現法さん:仕事は大変ですか。

大谷さん:時期にもよりますが、充実しています。現代法学部で勉強した知識が役に立っています。

現法さん:どういうことですか?

大谷さん:役所の仕事はどうしても法律や条文に縛られるので、民法などの知識を使うことが多いです。そのせいか、法学部出身者が多いですよ。私は戸籍係に配属されて、学生時代に「民法(家族法)」を履修しておけばよかったな、と少し後悔しています。

模擬店が汚したままの油汚れを、大谷さんがいち早く気づき、
一生懸命擦って落としていたのを思い出しました。
現法さん:そうなんですね。大谷さんはいつから公務員の勉強を始めたんですか。

大谷さん:3年生からです。1,2年生のうちは、葵祭実行委員会の活動に没頭していました。また、民間と迷っていたので、民間対策も行い、県庁も考えていたので専門の勉強も平行して行っていました。

現法さん:現代法学部は、今年度の入学生から、公務員になりたい学生を支援する「公務員志望者支援プログラム」が始まりました。現代法学部生に何かアドバイスをお願いします。

大谷さん:そうみたいですね。大学が支援してくれるなんてうらやましいです。では私からもささやかながらアドバイスを。

大谷さん:たくさん遊んで充実した学生生活を送ってください(笑)勉強面で言うと、まだ、1,2年生なら、総合教育科目にある「経済学」や「経営学」なども履修しておいたほうがいいです。私は授業で「経営学」を履修していたので、特に勉強はしませんでした。「経済学」はCSC(キャリアサポートコース)で勉強しました。

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大谷さん、ありがとうございました。また是非遊びに来てくださいね。後輩の指導の手伝いもよろしくお願いします。

ではまた次回!

2015年9月18日金曜日

【学問のミカタ】 「月」は誰のもの??
~月にかんするエトセトラ~

今年の『中秋の名月』は
9月27日です。
皆さんこんにちは。今日から第2期が始まりました!
1年生の皆さんは1限目から履修必修「刑事法基礎」の授業がありましたね。2年生の皆さんも、2限目に履修必修「キャリアデザイン基礎」の授業がありました。初日から第2期のスタートを切った現代法学部生は多かったのでは。

「シルバーウィークは授業がありますか?」この質問、多いです。「連休=授業がありそう」という考えが浸透していますね。現法さんも一瞬考えてしまいましたが、今回は祝日授業はありません!!連休ですので、ご安心を。

さて、今月の【学問のミカタ】、テーマは『月』です。今回は、教務主任の桜井健夫先生が記事を寄せてくださいました。『へぇ~』と思う内容ですので、ぜひ最後まで読んでみてください!ではどうぞ。
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桜井 健夫ゼミ風景


現代法学部でビジネス法、消費者法を担当している桜井健夫です。今月のテーマは月。日本文学、天文学、金融工学、法学4題話をします。

1 日本文学(俳句の月、和歌の月)
江戸時代には、月にまつわる句がたくさんつくられました。有名なところでは・・
 「名月を 取ってくれろと 泣く子かな」 一茶
「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」 芭蕉
「岩鼻や ここにも一人 月の客」 去来
 さらにさかのぼると、こんな和歌があります。

「月々に 月見る月は 多けれど 月見る月は この月の月」 詠み人知らず

 この和歌では、月がmoonmonth2つの意味で使い分けられています。どれがmoonでどれがmonthか考えてみてください。諸説あります。その上で問題。

「この月の月」とは、何月(なんがつ)のこと?

 答えは、「月の数を数えてごらんなさい。8月です。」と不思議なものとなります。確かにこの和歌には、月が8コありますが・・・。

 8月。旧暦の8月15日が中秋の名月です。旧暦(太陰暦)は月の満ち欠けを基準にした暦で、15日前後が満月になります。今年の太陽暦では9月27日となります。なぜ旧暦8月15日の月を中秋の名月といって鑑賞するのでしょうか。それは気候に加えて、このころの白道(はくどう)の角度も関係があります。

2 天文学(天体としての月)
桜井 健夫ゼミ
天体としての月は地球の衛星で、天球におけるその通り道を白道といいます。太陽の通り道を黄道(こうどう)、天の北極と南極の中間をぐるりと回る線を天の赤道といいます。旧暦8月15日の月が位置する白道は、角度がちょうどよい。そのため、①見やすく夜中まで見続けても首が痛くならない、それから、②月の出を連日待ってもそれほど待たされない。だから鑑賞にはもってこいとなります。①は単純ですが、②はどうでしょう。ピンと来ない人は国立天文台の説明を見てください。

月面はウサギがもちつきをしている姿に見えるというのが日本古来の見方。望遠鏡ではクレーターが見えます。1969720日、この月にアポロ11号が着陸し、アームストロング船長が月面に立って一言。「この一歩は小さいが、人類にとっては偉大な一歩である」でも人類は一歩で止まっています。火星はめざしませんでした。

3 金融工学(ロケットが 月で止まれば デリバティブ栄える)
 「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があります。風が吹く⇒ほこりが飛ぶので失明する⇒失明した人は見えなくてもできる三味線演奏をする⇒三味線を作るのには猫の皮が必要⇒三味線用に猫が捕獲されて減るとねずみが増える⇒増えたネズミは桶をかじる⇒桶屋が儲かる、という、何とも遠回りの因果関係です。因果関係がなさそうなものを無理にこじつける、という意味で使われます。
これと比べると、「ロケットが 月で止まれば デリバティブ栄える」という言葉は、少しましな因果関係がありそうです。月面着陸後、米国の宇宙開発は1986年のスペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故で止まりました。スペースシャトルの打上計画は約2年間延期。これにより、当時スペースシャトル開発プロジェクトに携わっていた優秀な技術者は、仕事がなくなりました。そこで彼らは、金融界に転身し、デリバティブをいじり始めたのです。その結果、デリバティブ取引が栄え、複雑な仕組商品も蔓延しました。宇宙開発計画が順調に火星を目指すものだったら、こうはならなかったかもしれません。

4 法学(月は誰のもの? 期間としての月)
 天体としての月(moon)に関する法律の話。月面の土地は誰のものでしょうか。これに関係する条約があります。「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」19661213日採択、第21会期国際連合総会決議2222号、19671010日発効2条には、「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない
http://www.jaxa.jp/library/space_law/chapter_1/1-2-2-5_j.html 
と規定されています。月は誰のものでもない、ということです。

 なお、国家による取得の対象とならないという表現を反対解釈すると、民間会社は月面に所有権を取得できることになるとして、誕生日や記念日のサプライズギフトとして「月の土地」を販売している会社があります(アメリカ・ネバダ州の会社。1エーカー(約1200坪)2700円)。

 最後に、期間としての月(month)に関する法律の話

1か月後に支払う、という約束を915日にしたら、支払日は10月何日?

 民法によれば、初日は算入しない(140条)、期間は起算日に応当する日の前日に満了する(1432項)。これに当てはめると、起算日は916日、これに応当する翌月の日は1016日、その前日は1015日、ということで、支払日は1015。回りくどいだけだって? では、130日の1か月後はいつ? 129日の1か月後は? 民法1432項但し書きを見てください。そのうえで、131日の1か月後と比べてみましょう。

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桜井先生ありがとうございました!

法律だけではなく、いろいろな分野から月を眺めてくださいました。月の土地を販売しているのは何故だろうと思っていた人も多いのでは?解決しましたね。最後は先生の専門分野からの質問でした。分からない人は桜井先生のところまで。

高校生の方でブログを読んでくれている人は、桜井先生はオープンキャンパスにいますのでぜひ質問してみてください!

ではまた次回!

2015年8月21日金曜日

【学問のミカタ】金崎先生から『宿題』が出されました!


みなさんこんにちは。

<夏休み>ですね~。大学内はとても静かです。

1~3年生の皆さんは夏休みを謳歌していることでしょう!
こんなに長いお休みがもらえるのは大学生ならでは!!です。大学に通わせてくれる親御さんに感謝し、楽しい夏休みを過ごしてくださいね。

4年生のみなさん、暑い中就職活動お疲れ様です。今年はシュウカツの時期が変わり、本当に大変そうだなぁと思います。夏バテしないように、頑張ってくださいね。

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さて、最近めっきり更新していなかったこの【現代法学ブログ】、しかし更新しない間もアクセス数は結構あり、申し訳なかったなぁなんて思っています。
オープンキャンパスに来る高校生の皆さんがアクセスしてくれているのですかね。ありがとうございます!!

現代法学部、楽しいですよ。

法律を知っていて損はなし!政治学も勉強できます!!
現代法学部で一緒に学びましょう☆

ちょっと宣伝してみました(笑)。
今週末にも<オープンキャンパス>があります、ぜひ現代法学部の学生さんや先生とお話してみてください。

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『オープンキャンパスに○校行くこと!』

が宿題になっている高校さんもあるみたいですね。今回の【学問のミカタ】のテーマは、まさに『宿題』。我が現代法学部は、金﨑 剛志先生が記事を書いてくださいました。

金崎先生は行政法の先生です。
今年度から始まった、<現代法学部公務員志望者支援プログラム>の担当者の一人として、皆さんを支援してくださいます。

読んでみると、ちょっと難しい・・・でも皆さんは夏休み中で時間がある~!!とのことで、最後の先生からの『宿題』もぜひ考えてみてください。ではどうぞ~

【 学問のミカタ:テーマ『宿題』】

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「宿題」
金崎剛志

(1)宿題の思い出
 夏休みの苦しい思い出として、宿題がトラウマになっている人は少なくないのではないだろうか。筆者自身も、小学校、中学校、高等学校のときは真面目に宿題をこなすタイプではなかったので、8月末にはいつも苦しんでいたことをよく覚えている。というのも、夏休みの宿題というのは、計算ドリルなど単純な問題をひたすら解くという行為が退屈でたまらなかったのである。
 思い返してみれば、義務教育の段階で、単純作業をひたすらこなすということにもし慣れていれば、他の職業を選んだのかもしれない。逆に言えば、単純作業に対する反発が、筆者を研究者という今の職業に導いたとも考えうる。そう考えると、夏休みの宿題を呪うどころか、感謝すべきではないかとすら思えるのである。

(2)法学的な論点
 宿題といえば、「ドラえもん」の中で、のび太君がいつも苦しんでいたことを思い出す。のび太君はいつも宿題忘れで廊下に立たされているという印象がある。ところで、敢えてマジレスするならば、現代においては、宿題忘れに対する制裁として廊下に立たせるという行為は、学校教育法で禁止された体罰との関係で論じられることがある(実際に議論しているのは、法律学の研究者ばかりではなく、小中高の学校教育にたずさわる先生や教育学の研究者もいると思われる)。ここで扱うのはその論点ではなくて、別の切り口から論じることとする。
 学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と定める。法的には、懲戒は適法で、体罰は違法であるということになる。この規定を受けて、文部科学省では「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」を発している。この通知はインターネット上でアクセスすることができるので、参照されたい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm

 この通知の中に、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」というタイトルの別紙が添付されている。この別紙に、法律で禁止された体罰の具体例が記載されている。テレビ番組などで体罰に関する議論がなされているときは、この別紙に基づいていることが多いように思われる。そこで、「通知とはなんだろうか」という疑問を持つ読者もいるのではないか。

(3)行政立法とは何か
 ところで、学校教育には、上の紹介した通知の他に、学校教育法施行規則と学校教育法施行令がある(いずれも総務省の法令データ提供システムでアクセスすることができる)。そこで、通知、施行規則、施行令とは法的にどのように位置付けられるのか、という疑問が生じる。

 学校教育法は法律であり、法律は国会で制定されるものである。国会というのは、国民が選挙した議員から構成される。国会が法律を制定すると、法律が国民に対して拘束力を持つのは、法律が国民の選挙した国会議員から構成される国会で決めたルールだからである。他方、通知、施行規則、施行令というのは、国会が制定したものではない。

 一般に、施行令というのは内閣の発する命令(政令)で、施行規則というのは各省庁の発する命令(省令)である。通知というのは、ある行政組織内部において上級機関が下級機関に対して発する通達と呼ばれるものの一種である(この通達というものは、訓令、内規、要綱、通牒などの名前であることもある)。通達は、このようにある行政機関内部のルールだから、一般国民が通達に拘束されるということはない。したがって、一般国民が通達に違反したからといって制裁を与えられるなどということはない。上に紹介した通知も、この意味での通達である。これに対し、規則などといった名前がついたものの中には、一般国民を拘束するものがある

 施行令、施行規則、通達という形式を持つものは、行政機関が一般的なルールを定めるものであるので、「行政立法」と呼ばれる。行政立法の中にも、国民に対して拘束力を持つものと持たないものがある。なぜ行政立法というものがあるかといえば、法律の規定は抽象的であるため(そもそも抽象的でなければルールとして実効性を持たない)、具体の事案で適用するためには、法律の規定をより具体化して分かりやすくする必要がある。そこで、法律が、その詳細を内閣や各省庁といった行政の側で定めよという指示を行うことがある(これを委任」という)。この委任に基づいて、国民の権利義務の内容を行政が定める行政立法が、「法規命令」と呼ばれる。法規命令は法律に基づいて定められたルールなので、一般国民に対して拘束力を持つ。これに対し、委任に基づかないで行政が法律の詳細を定めるルールが、「行政規則」と呼ばれる。行政規則というものは、このように、国会が定めるものではなく、しかも法規命令とは異なって法律の委任に基づかないものだから、一般国民に対して拘束力を持たない。通達も、この意味での行政規則の中に分類されるものである。何らかのルールの名前として、同じ「規則」という名前がついているものでも、一般国民を拘束するものとそうでないものがあるのである。

 法律の委任というのは、例えば「その他厚生労働省令で定める事項」(薬事法426号)という定め方を法律がしている場合である。薬事法のこの委任を受けて、薬事法施行規則12項では、「法第4条第2項第6号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする」として法律の細目を定める。これは、上に紹介した意味での典型的な法規命令といえる。したがって、国民に対して拘束力を有する。

(4)宿題

 では、上に紹介した学校教育法施行例、学校教育法施行規則、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」などの文書はそれぞれ、法規命令か、それとも行政規則に当たるものなのか。この問題を宿題として読者諸氏に解いてもらいたい。

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金崎先生ありがとうございました。
答え合わせは次回ですかね。 ではまた!

2015年7月21日火曜日

【学問のミカタ】~海と兵士~ 
ボランティア活動を通じて知る 『絆』

2014.5 震災ボランティア(気仙沼)

みなさんこんにちは。

週末に梅雨も明け、毎日暑いですね。今週で第一学期の授業が終わり、いよいよ定期試験に突入です。
今月を乗り切れば、楽しい!?「夏休み」が始まります。
旅行、BBQ、海水浴・・・楽しいことを想像しながら、テスト勉強を頑張ってくださいね!

さて、今日は【学問のミカタ】シリーズです、テーマは

【 学問のミカタ:テーマ『海』】


西下彰俊先生が記事を寄せてくれました。
西下先生は現代法学部の6プログラムのうちの1つである「福祉法プログラム」の先生で、過去にもボランティア活動について記事を書いてくださっています。ではどうぞ。


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2014ゼミ合宿恒例の腕相撲大会

 海と兵士

 現代法学部の西下彰俊です。福祉論と社会調査を教えています。私は、社会学の方法論をベースに外国や日本の高齢者ケア政策を比較分析するという「福祉社会学」的研究を行っています。ゼミでは、スウェーデン・韓国・日本の高齢者ケア政策を勉強しつつ、夏休み中には、仙台の仮設住宅の高齢入居者へのボランティア活動を行っています。この夏からは明治大学のゼミとコラボしながらボランティア活動を行う予定です。

 学生の皆さんは、定期試験が終わった後に、海に行こうとかキャンプしようとか、いろいろ相談しながら計画を練っていることでしょう。7月は、試験のために精神を集中させるモードとレジャーに向けて精神を弛緩させるモードのダブルモードが交錯するというユニークな特徴を持った月であると言えます。もっとも受験生の皆さんは、勉強モード1本かも知れませんが、たまには息抜きもしてください。

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さて、お題の「海」。タイトルは、海と兵士としていますが、決して物騒な内容ではありません。

海は、ロマンチック「名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ 故郷(ふるさと)の岸を離れて 汝(なれ)はそも波に幾月(以下略)」という島崎藤村が詠んだ「椰子の実」を思い出します。中学1年の夏、伊良湖岬の恋路が浜のキーホルダーをもらったことも良い思い出です。ただし男友達からですが。
 
海は、残酷金子みすゞの「波」という詩を思い出します。
 「波は子供、手つないで、笑って、そろってくるよ。
波は消しゴム、砂の上の文字を、消してゆくよ。
波は兵士、沖から寄せて、一ぺんに、どどんと鉄砲うつよ。
波は忘れんぼ、きれいなきれいな貝がらを、砂の上においてくよ。」

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2011311津波という途轍もない数の兵士が一度にやってきて、多くの人の命を奪い、多くの家を壊していったのです。あれから44か月。あまりに時間がかかり過ぎました。家屋の全壊や半壊で自宅に住めなくなった被災者は、避難所や親戚の家に一時的に身を寄せた後、みなし仮設住宅(空き部屋のある賃貸アパートや市営住宅など)やプレハブ仮設住宅に住み続けました。

やっと終の棲家としての「復興公営住宅」が完成し始め、被災者が入居し始めています。しかしまだまだ、「復興公営住宅」の建設は遅々たる歩みです、全部完成したとしても被災者の数には見合っていません。

実は、「復興公営住宅」に入居するということは、家賃が発生するということです。決して安くない家賃を払えない被災者はどうすれば良いのでしょうか。特に高齢の被災者の場合、ますます劣化しつつあるプレハブ仮設住宅に経済的な理由から住み続けなければなりません。しかし、自力で自宅再建された方や復興公営住宅に移転される方が徐々に増えて来て、各仮設住宅は入居率がますます低くなっていきます。仮設住宅で作られた自治会が解散しつつあります。自治会主催のイベントもなくなり、被災という被害の後の「社会的孤立という被害」が生じつつあります。

今後、どうあればいいのでしょうか。仙台市内の仮設住宅3か所でのボランティア活動を通じて、ゼミ生達とこうした答えの見つからない問題を考え続けています。そうした問いを考え続け、苦闘すること。これも社会科学という学問の一つの姿ですね。そうそう、先に紹介した金子みすゞについては、別の詩「私と小鳥と鈴と」を福祉論の授業でも取り上げています。


 さて、事例としては少ないのですが、被災された方の中には、すでに自力再建して新しい戸建ての家が完成しているにもかかわらず、仮設住宅に住み続けておられる方もいます。何故でしょうか。そこには、合理的な判断を超えた情緒的なが存在するようです。こうした事例にはさらに驚くことがあります。同じ仮設住宅に住んでおられる住民さんには、秘密にしておられるのです。同じ被災者なのに、自身が恵まれていることへの気まずさを感じておられるのでしょう。被災した人々のこうした気持ちを理解できるようになることも、継続してボランティア活動をしていることの一つの成果と言えるかも知れません。

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西下先生ありがとうございました。
海はいろいろな顔を持っていますね。震災から4年4ヶ月が過ぎてもいまだに解決しない問題…西下ゼミはこれからもボランティア活動を通じて答えを模索し続けます。

ではまた次回!