2020年2月19日水曜日

法学検定ベーシックの受験結果が発表されました!

余寒厳しき折、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今日は、先月公表されました、法学検定ベーシックの受験結果について、お知らせいたします。


「法学検定」とは、法学に関する学力を客観的に評価する、日本で唯一の全国規模の検定試験です。
法学検定そのものは2000年に始まり、2012年からは、今のようにベーシック(基礎)、スタンダード(中級)、アドバンスト(上級)の3コースで行われています。
企業で人事の際の参考資料として利用されることもあり、ご存知の方も多いのではないでしょうか。


さて、今年度の検定は、2019121日(日)に実施されました。
法学部1~2年次を対象とするベーシックコースの受験者数は、全国で3,799名、そのうち本学で受験した在学生は、125名でした。
今年度からは受験は任意となったものの、現代法学部1年生の約半数が受験しました。

なお、本学は、同検定試験の受験料をサポートしており、所定の申込手続を経た在学生は、無料で受験することができます(【参考】今年度のベーシックコース受験料:4,400円(税込))。


お待たせしました、今年度の実績をご紹介します。
上記、受験した現代法学部1年生125名のうち、約半数に当たる62名が合格しました!
今回、とくに素晴らしかったのは、そのなかに、なんと58点(60点満点)という高得点により、全国2位の好成績をおさめた学生がいたことです!


合格者の皆さんには、次の目標を設定して、ぜひ、さらなる高みを目指してほしいと思います。
これから現代法学部で学ぶ皆さん、法学検定ベーシックの合格を、1年次の目標のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
今回受験することができなかった在学生(現1年生)は、来年度も本学のサポートを受けて受験することができますので、検討してみてください。

現代法学部教職員一同、皆さんの挑戦を、引き続き応援しています。

2020年1月23日木曜日

現代法学部開設20周年記念行事報告


現代法学部20周年記念行事委員会委員長
現代法学部教授 藤原 修



 本ブログでもご案内した、現代法学部開設20周年記念式典・パーティーは、20191116日(土曜)午後3時より、予定通り挙行され、来賓、卒業生、在校生ら合わせて100名近い来会者を得て、盛況のうちに終えることができました。
ご来会いただいた皆様に感謝いたします。















島田和夫本学名誉教授による記念講演では、島田先生ご自身の消費者問題研究活動と東京都あるいは国の消費者問題に関する審議会などの社会活動への取り組みが、本学部開設に向けた学部理念の策定に深いかかわりがあったことを明らかにして、学部の理念・特徴がどういうものであるかを改めて明らかにしていただきました。
学長、理事長らご来賓の方々のスピーチも、本学部のこの20年の歩みの中で積み上げた、教育・研究実績への祝意と、今後のさらなる発展に向けた叱咤激励を込めたお言葉をいただき、来会者一同にとり、心に残る記念式典となりました。














式典後のパーティーでは、卒業生、在学生、教職員らがにぎやかに懇談、交歓する機会を得、互いに、それぞれの歩みと絆を確認する良いひと時を過ごすことができました。
来会者すべて、そして学部の10年後、20年後への期待の言葉をもって、本行事を締めくくりました。
 以下に、式典での羽貝正美現代法学部長のあいさつを掲げます。なお、島田先生の記念講演は、来年度刊行の本学部紀要『現代法学』の学部開設20周年記念号に掲載される予定です。














<式典の閉会の辞> 現代法学部長 羽貝正美
現在、学部長を仰せつかっております羽貝です。
本日は、OBOG、そして現役学生のみなさん、多くの教職員・大学関係者の皆様にお越しいただき有難うございました。岡本学長、後藤理事長にはお言葉を頂戴し、心からお礼申し上げます。名誉教授の島田先生には、学部の原点を想起するご講演をいただき有難うございました。このように多くの皆様とこの節目の時を共有できましたことを嬉しく思っています。式典を終えるに際して、一言ご挨拶をさせていただきたいと思います。
ご承知とおり、本学は来年、創立120周年を迎え、秋にはその記念式典も予定されています。本日の学部開設20周年の式典は、本学の120周年記念事業のひとつとして企画され、本日を迎えるにいたったものです。
20年」という節目は、人の年齢で言えば、「成人年齢」にあたります。これまでの歩みを自ら振り返るとともに、これからさらに開拓し、責任をもって進むべき次の一歩を、いよいよ自覚する時期と言ってもよいかと思います。短いようで長い時間というべきかと思いますが、学部としては、この間のさまざまな取り組みを土台として、これをさらに盤石なものとすることが求められています。現代法学部がいかなる学部で、何を大事にして追求している学部か?どのような学生を育成しようとしているか?端的に言えば、現代法学部という学部のアイデンティティを確立し、未来に向けて改めて教職員・学生との間でこれを共有することが必須と思います。
具体的には、現代の社会に生起する、極めて多様で、複雑な、そして新しい課題、端的に言えば現実の社会の要請に応えられるような、しかし同時に、「次の社会をつくるために、法は何を担っているか」、を自覚的に、批判的に研究し、その成果を教育に還元すること、その教育実践を通して有意な人材を育成すること、ここにこれからの現代法学部の社会的使命があり、それは他大学法学部と異なる独自性、現代法学部のアイデンティティそのものと考えております。
こうした試みの一環として、2015年には、かなり大がかりなカリキュラム改革を実施いたしました。少人数教育の重視ということもありますが、従来の消費者、福祉、環境という3分野とともに、総合法、公共政策、ビジネス法というさらに3分野をおこし、6つのプログラムを用意して学生の学びの軸足としています。2~3年次指定であった演習も、34年次の2年継続の授業として、2年次にはその準備的な時間として基礎演習をおきました。また公務員を志望する学生がそれなりにおりますが、彼らを側面からサポートする仕組みも導入いたしました。とはいえ、改革から5年目、まだまだ途中の段階ではあります。この改革の成果を不断に検証しつつ、新たな課題に対応していきたいと考えています。
最後になりますが、今後とも皆様の変わらぬお支援を賜りたくお願いし、閉会の辞とさせていただきます。本日は有難うございました。

2019年12月24日火曜日

2019年度現代法学部ゼミ研究報告会を開催しました!

皆さんこんにちは。現代法学部の山本です。
年の瀬も押し迫り、皆さんも、何かと気ぜわしい毎日でしょうか。


さて、今日は、124日(水)に開催されました、毎年恒例の「ゼミ研究報告会」について、当日の写真も若干交えながらご紹介しようと思います。

今年は、3つの教室に分かれて、12ゼミ・15グループによる報告が行われました。
各グループによる多彩な報告テーマは、こちらのタイムテーブルをご覧ください。



在学生のみならず、保護者の方も来てくださり、また、学外から足を運んでくださった方もいらっしゃいました。

今年度着任して、初めてゼミ研究報告会に参加した私にとって、さまざまな分野の報告を一度に聞くことができる機会は、とても新鮮でした。





社会における最新の話題を取り込んだテーマ設定や、パワーポイントを使ったわかりやすい説明など、随所に工夫がみられました。
来場者による事後アンケートにも、よく調べ込まれている印象であったとか、新しいことを知ることができた、ゼミの雰囲気をつかむことができたなど、好意的な意見・感想も多く寄せられていました。

一方で、当日に準備不足を痛感したり、準備を十分にしてきたつもりでも、フロアからの質問への対応に困り果ててしまったりと、各自、悔しい経験や反省もあったかと思います(アンケートでも、準備不足などを趣旨とする指摘がありました)。
とはいえ、こうした反省もふくめて、各ゼミ・報告者にとって、この報告会が有意義な経験であったらよいと思います。

ご報告者の皆さん、ほんとうにお疲れさまでした!


そして、例年どおり、ゼミ研究報告会のあとには、生協食堂にて懇親会が開かれました。
ゼミ教員のもとに集ったり、学生どうしで労い合ったりと、和やかな雰囲気の会になりました(写真でみると、学生の皆さん、すこしお疲れの様子でしょうか)。




以上、簡単ではありますが、ゼミ研究報告会についてのご紹介でした。
年が明けると、1月後半には定期試験を控え、またすぐに慌ただしい毎日が始まりそうです。

皆さん、身体に気を付けて、どうぞよい年末年始をお過ごしください。
来年も、よろしくお願いします。

次回のブログでは、現代法学部開設20周年記念式典の様子をお伝えする予定です。どうぞお楽しみに!

2019年10月10日木曜日

現代法学部開設20周年記念式典・パーティー開催のお知らせ


現代法学部20周年記念行事委員会委員長
現代法学部教授 藤原 修


 現代法学部は、2000年に開設され、今年で20年目を迎えます。この間、現代法学部は、弁護士や司法書士をはじめ公務員、民間企業、非営利法人等、各界に多くの人材を送り出し、「現代法」を冠する新しいユニークな法学部として、確固たる歩みを進めてきました。

 そこで、開設20年を記念して、卒業生、在校生、大学教職員ら学部関係者を一堂に会して、下記の要領で、記念式典とパーティーを開催いたします。

 その趣旨は、学部創設の頃を振り返り、開設以来の学部、卒業生、在学生の絆を確認しつつ、それぞれの歩みを共有して、学部、在校生、卒業生を励まし、それぞれの一層の発展を期すというものです。

 式典にいらした方には、卒業生のたよりを多数掲載した学部20周年記念冊子『絆と歩み』を差し上げます。(在学生にはすでに教室で配布しています。)

 在学生、卒業生の皆さん多数の来会をお待ちしています。
(参加には、申込・登録が必要です。)


                                     記

日時  20191116日(土)15時より
    <記念講演 島田和夫・元現代法学部長、東京経済大学名誉教授>

場所  東京経済大学 大倉喜八郎進一層館1階ホール
式典終了後に生協食堂にて記念パーティー

会費  パーティーを含めて無料

申込  在学生はポータルから、卒業生は大学ホームページのイベント欄から
    申込んで下さい。

                                                                                                     以上


2019年5月8日水曜日

【学問のミカタ】タイでのボッタクリから法(契約)について考える

今回の【※学問のミカタ】ブログは、現代法学部の中川 純からお届けします。


1.タイという国
 タイは、「微笑みの国」といわれる。タイ人は、常に笑顔を絶やさず、ホスピタリティにあふれている。しかし、同時に「マイペンライ精神」と呼ばれる、南国らしい楽観的な国民性を持ち合わせている。「マイペンライ(ไม่เป็นไร)」とは、「大丈夫」、「問題ない」という意味だが、同時に自分のミスを棚上げするときに「仕方ない」、「運が悪かった」という意味でも使う。そういうと、タイにはいい加減で、怠惰な人しかいないような印象を受けるかもしれない。実はタイは、受験競争が激しく(その様子は、タイ映画「バッドジーニアス:危険な天才たち」をみて、確認してください)、特にエリートと女性は、非常によく働く。
笑顔、勤勉、いい加減が混とんと同居する国、それがタイである。




ピンクのブーゲンビリアに一気に南国気分! 











タイは仏教国。いたるところにお寺があります。




2.タイでボッタクリにあう

 数年前に、タイで開催される国際学会で報告する機会があった。場所はバンコク市の郊外で、地下鉄の終点からタクシーで移動しなければならなかった。地下鉄を降りたところで待っているタクシーに乗ろうとして、場所を告げたところ、気のよさそうな運転手が「300バーツ(約1050円)でどうだ」と申し出た。相場がわからないので、とりあえず運ちゃんに「OK」というと、笑顔で車を出してくれた。距離にして1015キロほどで、「タイのタクシーは安いな」と喜んでいた。ところが、帰りに別のタクシーに同じ地下鉄の駅に送ってもらったところ、料金メーターでの料金は、高速代込みで135バーツ(470円)。高速道路にも乗らず、下道で2倍以上の値段をふっかけられたことを、そのとき察知。ボッタクラれたといっても日本円で600円程度。大人なのに「セコイことをいうんじゃない」と叱られそうだが、金額よりもボラれたことがショックで、テンションがガタ落ちした。




タイのタクシー。ちゃんと”Taxi-Meter”と書いてある(このタクシーは本文とは関係がありません)。




タクシーのボッタクリはタイに限らず、どこにでもみられる。世界最大のプロレス団体WWEの元スーパースターのヨシタツ選手でさえ、アメリカで「遠征にいくときにはレンタカーを利用する。タクシーにボラれるから」といっていた。屈強なプロレスラーでさえぼったくられるんだから、貧弱そうな大学教授をボルなんてたわいもないことだろう。

 タイの物価は安い。クィッティアオ(タイ風ラーメン)が150バーツ(175円)くらい。ところが、恐ろしいもので、慣れてくると安さを感じなくなる。地方都市にいったとき、バイタク(バイクタクシー)を利用することになった。バイタクは料金メーターがないので交渉制。2キロくらい離れたところに調査にいくために利用しようとしたところ、運転手が「60バーツ(210円)どうだ」と申し出た。「だまされないぞ」とこちらは「50バーツ(175円)だ」といったところ、「ダメ」との返事。「60バーツなんて高い!もったいない!」と思わず、その道のりを歩きだしそうになった。冷静になって考えたら差額はわずか10バーツ(35円)。その金額のために、気温30度以上の炎天下の中、スーツを着て、2キロの道のりを歩いて、汗だくになるのは、すごくバカげていることにようやく気づく。結局、その運転手に頼んで、バイタクを利用。後から聞いたら、バイタクの値段も適正価格だった。「羹に懲りてなますを吹く」。バイタクのお兄さんを信じなかったことを激しく反省する。


バイクタクシー。背番号がついたオレンジのビブスが目印
(このバイタクは本文とは関係がありません)。



3.ボッタクリにあって考える

 タイでの経験から2つのことを考えた。1つは、なぜボッタクレれたかだ。「それは、あなたが貧弱だからですよ」といわれそうだが、プロレスラーでもボラれるそうである。だとすれば、あまり関係はなさそうだ。ボラれた理由は、情報の不均衡にある。タイにはじめて行って、タクシーを利用する日本人は、地理もわからないし、タクシー料金の相場もわからない(ついでにいえば、料金メーターがあるのに料金交渉してくることも普通と思ってしまっていた)。つまり、「この距離なら、これくらいの値段」ということがまったくつかめていない。相場がわからないから、値段交渉のしようがない。だから言い値で承諾してしまう。以前「紛争処理」の技法について勉強したときに、「交渉の勝ち負けは情報量で決まる」と習ったが、それを、身をもって経験させられた気がした。
 もう1つは、合意することの恐ろしさだ。授業で契約のことを教えるときに、「申込み」とそれに対する「承諾」により成立する合意(契約)は、理性的な個人によってなされたのであれば、両者を拘束すると説明する。しかし、たとえ契約当事者が理性的であっても、情報が不均衡な状態では理性的な判断ができないのに、承諾すればそれに効力が与えられる可能性がある(ただし、おそらくタイでもタクシー会社的には料金メーターを使わないのは規則違反だと思われます。また、メーター不使用はもしかすると違法の可能性もあります)。この状況での合意が相場的に正しいか否かはギャンブルで勝つ確率に等しい。うまくいくかどうかをダイスに委ねるようなものだ。海外旅行ではこの危険に常につきまとわれることとなる。



クィッティアオ(タイ風ラーメン)。「タクシーが近くを走ってて、危ないな」と思ったら、テーブルのほうが道路の上でした(汗)。




4.おわりに

大人の日本人であっても、はじめて訪れた外国では、情報量でみれば赤ちゃんに等しい。いとも簡単にボラれてしまう。ボラれないためには、事前に適正な情報を得て、さらに合意の際には慎重になることが必要である。これは、ボッタクリ防止だけではなく、普段の生活の中で交渉、契約するときにも必要なことかもしれない。日本に住んでいても常に情報を得ること、慎重な判断をおこなうことをこころがけることが必要だろう。

2019年3月13日水曜日

【学問のミカタ】旅先で見つける海外法律事情

今回の【※学問のミカタ】ブログは、現代法学部の永下 泰之からお届けします。


今回、永下は出張でシアトルに行き、ワシントン大学ロースクールを訪問しました(研究調査のためです)。


University of Washington, School of Law(ワシントン大学ロースクール)

ワシントン大学は、ワシントン州シアトル市にある州立大学です(ワシントン州には、ワシントン州立大学(Washington State University)という州立大学もありますが、別物です)。州立大学のトップ校群(いわゆる「パブリック・アイビー」)の一つである、非常に著名な大学です。非常に広大なキャンパスで(所有総面積は約200万平方フィートもあるそうです。)、また非常に美しい大学でもあります。







さて、本題に戻りましょう。

1.シアトルたばこ事情
大学の周囲を散策していると、写真のようなサインをしばしば見かけます。
  



 東京オリンピックをひかえて、東京都では「受動喫煙防止条例」が成立しました。同条例は、受動喫煙を防止するために、敷地内を禁煙とし(屋外喫煙所の設置も不可)、原則として屋内禁煙(ただし、専用喫煙室の設置は可)とするものです。
ワシントン州でも同様の条例があり、レストラン、バー、飲み屋、ボウリング場、野球場を含む公共の建物や職場は、全面禁煙となっています。しかし、東京都とは若干異なった規定も設けられています。ワシントン州の条例には次のような規定があります。

Smoking prohibited within twenty-five feet of public places or places of employment—Application to modify presumptively reasonable minimum distance.


上記規定により、建物の出入り口・窓・換気口から25フィート(約7.5メートル)以内も禁煙となっています。上の写真はバス停ですが、バス停も「公共の建物(public place)」に該当するため、25フィート以内禁煙のサインが設置されているわけです。そのためか、日本のコンビニでよく見られるような灰皿などは一切ありません(日本ではセブン・イレブンが灰皿の撤去に向けて動き出しています)。25フィートといえば約7.5メートルですので、かなりの範囲をカバーすることになるため、町中は事実上禁煙となっています(とはいえ、シアトルの道路は広いのでカバーされない範囲も多くありますし、歩きタバコ自体を禁止する条例はありませんので、それほど多くはありませんが、ちらほら見かけます)。ちなみに、同条例に違反すると、100ドルの罰金が課されます。

このように、受動喫煙に関する規定をみても、考え方の違いがあり、法律を研究する者としては、非常に興味深いものです。海外旅行に行かれる際には、こうした条例などにも関心を持ってみてはいかがでしょうか?むしろ、条例を知らないと上述のように罰金が課されるおそれがありますので、ぜひ調べてみてください。



2.シアトル最低賃金
現在、アメリカは生活費が高騰しており、シアトルも例外ではありません。シアトルの住宅価格(中央値)は、753,600ドル(約8,400万円)となっており、全米でも3番めに高いそうです(とても筆者には購入できません)。また、家賃も高額です。シアトルのアパートで1ベッドルームを借りると、(中央値で)1,650ドル(約18万円)かかります。
このように、シアトルで生活するには、住宅費だけで莫大な費用がかかります。

そこで、最低賃金が問題になります。
東京都の現在(2019年)の最低賃金は、時間額985円です。
では、シアトルはどうでしょうか。日本とは条件が異なりますので、軽々に比較することはできませんが、次のようになっています。

・従業員数501人以上の企業
時間額16ドル(約1,800円)

・従業員数500人以下の企業
時間額15ドル(約1,700円)。ただし、個々の従業員の医療給付制度に最低3ドル拠出し、さらに/または従業員がチップで1時間あたり最低3ドルを得る場合、最低賃金は時間額12ドル(約1,300円)。したがって、事実上最低賃金は15ドル(約1,700円)。

業種・従業員数にもよりますが、東京都と比べると、約1.6倍以上です。非常に高額だと思われるかも知れませんが、先に見た住宅事情等に鑑みると、シアトルではそれほど高額だとはいえません(ちなみにシアトルでは住宅費のほかの生活費も比較的高額です。)

こうした最低賃金からもわかるように、現在、日本は相対的に所得が低く抑えられています。海外旅行をしたことのある方はわかると思いますが、現在の状況で、日本で所得を得ている人がシアトル等の都市に行くと、多くの者が現地では「相対的貧困」層に該当します(筆者も実感しました。お金が飛ぶように消えていきます)。

日本国内では、現在、「相対的貧困」が問題となっています。わずか1週間の滞在でしたが、自分がその立場になってみて、実感し、見えてくるものもありました。今回の出張は、研究以外にも、色々と知ることができ、有意義なものであったと思います。

みなさんも、法律問題を通じて、社会を観察してみてはいかがでしょうか?


3月の【学問のミカタ】
・経済学部「東京一極集中とは
・経営学部「
ピークですね (T_T) 
・コミュニケーション学部「「コミュニケーション学」の海へ漕ぎだすために
・キャリアデザインプログラム「ジョブシャドウイングは「観察学習」のキャリア教育プログラム
・全学共通教育センター「論文執筆と翻訳と

2019年1月18日金曜日

【学問のミカタ】法の学び方-アイラック

今回の【※学問のミカタ】ブログは、現代法学部の桜井 健夫からお届けします。



1 アイラック
アイラック? ライラックは紫の花、アイライクは like”。これらと違ってアイラックは単語やその集まりでなく、4つの単語、Issue(問題), Rules(法規範), Application(適用), Conclusion(結論)の頭文字。ある問題について、関連する法規範を頭に浮かべ、それを解釈して問題の事実に具体的に当てはめて適用し、結論を出すという一連の手順です。問題に向ってから結論に至るまでに、法規範、適用をはさんで分けて考えるという合理的なステップを踏みます。

ssue(問題)・・・・どんな問題なのか? 
ules(法規範)・・・それに関連する法規範はどうなっているか?
pplication(適用)・ その法規範に問題の事実を当てはめて適用すると? 
onclusion(結論)・ それで結論はどうなるか?


IRACは法律を使う際の基本であり、法律実務家教育を行う法科大学院では真っ先に学びます。最近では大学においてもこれを学ぶようになってきており、昨年、現代法学部の新入生もIRACを学びました。ここではそれをさらに分かりやすく紹介します。その授業を受けた学生の皆さんも、これを読むとさらによく分かります。


2 設 例 

個人情報のケース  
1 問題(Issue
  自分の名前で検索すると10年以上前の破産の事実が書かれたサイトが
  検索結果に表示されるので、表示されないようにしてほしい。
○山△男         検索
    ・○山△男のサイト
    ・□市×町の○山△男 
    ・○山△男、破産! 
     ・・・・・・・


2 法規範(Rules
  憲法13条を根拠に、個人情報を公開されない権利(プライバシー権)があるとされる。さらに、EUデータ保護規則17条に規定されるような「忘れられる権利」もあるかが問題であり、最高裁3小決平成29・1・31は、検索結果の抹消を求めたケースについて、「忘れられる権利」については明言しないまま、表現の自由とのバランスを意識して、①当該事実を公表されない法的利益と②当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して、②より①が明らかに優越する場合には、削除が認められるべきであるという一般的判断基準を定立した。法規範には、○○法○条というものばかりではなく、最高裁判例や決定例が述べる一般的判断基準も含まれ、本件ではこの決定例の一般的判断基準が法規範と位置付けられる。
なお、憲法のほか、関連法として民法や個人情報保護法も想起される。しかし、民法ではプライバシー侵害の不法行為が考えられるものの、不法行為では損害賠償請求はできるが削除請求はできないし、名誉棄損の不法行為を考えても、リンクの削除が名誉を回復するのに適当な処分に当たるとは言い難いので、民法には削除請求のぴったりとした根拠となる規定がない。また、個人情報保護法には削除請求権は規定されておらず、根拠となりうる規定はない。


3 適用(Application
  憲法を根拠とする上記決定の一般的判断基準に、本件の具体的事実を当てはめる。①10年以上前の破産の事実が不特定の人に知られることを防げる法的利益、②この事実を検索結果の形で広く伝えることの社会的意義、公共性などを対比する。
上記最高裁決定で問題とされた「児童買春をしたとの疑いで逮捕された事実」という犯罪に関する情報と比較すると、本件で問題となる「過去に破産した事実」は、経済的マイナス情報に過ぎず、かつ10年以上前のことなので、検索結果の形で広く伝えることの社会的意義、公共性はそれほどない。他方、10年以上前とはいえ破産の事実は本人の経済活動にとっては障害となるものであり、破産法の制度趣旨からしてもやり直しの機会を妨害すべきではなく、①が②に明らかに優越すると考えられる。

4 結論(Conclusion
  したがって、リンクの削除は認められるべきである。

 



3 特に「適用((Application)」について
IRACのうち一番難しいのはA、つまり「適用」です。このケースでは、最高裁平成29年1月31日決定(以下平成29年最高裁決定といいます)が示した基準をルールとして位置付け、それに問題となっている具体的事実を当てはめています。

      





最高裁決定が示した基準では、利益衡量をすることになります。利益衡量とは、対立する利益を秤にかけることです。ここでは、上記①と②が秤にかけられます。そして、①が②に明らかに優越するか、つまり、①の方に秤がはっきりと傾くかを見ます。それは恣意(しい)的(思いつくまま)に、あるいは直感的に行われるものではありません。利益衡量をするには、それぞれの「重さ」を何らかの形で比較可能にする必要があるます。そのためには、検索結果表示の評価、過去に破産した事実の評価を検討する必要があります。

4 検索結果表示にはどんな意味がある?

まず、表示される立場から検索結果表示の評価を考えます。
少し前までは、過去は消えました。悪いウワサや恥ずかしい失敗も、季節がたてば世間は忘れるし(「人のうわさも75日」)、本人も忘れます。だから人生はやり直しができると言われます。

ところが昨今は、過去が消えない時代となっています。過去の個人データが集積されてAIにより解析(プロファイリング)され、個別化広告が向けられます。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどはそれを行う代表的な主体です(「『グーグルのサーバーからデータが削除されることはありません』完全削除指示しない限り、残り続ける。」2018716日経新聞)。

さらに、過去が消えないだけでなく、未来も作られる時代になりつつあります。たとえば、アマゾンは、基礎データとして1. 顧客の注文実績/2. 商品検索、キーワード検索の実績/3. 希望リストの分析/4. ショッピングカートの内容物の履歴/5. キャンセル実績、返品実績/6. 特定の商品に顧客のマウスカーソルがとどまった時間を収集し、AI分析をしたうえ、個別化広告をし、さらに予測配達をしようとしています。5年以上前の201312月に米国内で取得した「予測的な配送システム」の特許(下図)は、顧客が注文する前に、予測に基づいて品物を出荷し、注文を行った時点で、すでに最寄りの拠点まで商品を配送している、というシステムです。こうなると、その注文は自分で決めたのか、決めさせられたのか、分からなくなります。

  

検索結果表示にはこれらと似た問題があります。ここでも、自分の過去は消えません。そして、自分の過去を知っている検索エンジンが、検索結果としてそれを表示し続けることによって、自分の未来が影響を受け続けることになります。

 次に、検索表示を提供する立場から検索結果表示の評価を考えると、「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する」(平成29年最高裁決定)と言えます。

最後に、検索する立場から見ると、「検索事業者による検索結果の提供は、公衆が、インターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている」(平成29年最高裁決定)といえます。ただし、注意しなければならないのは、検索結果は、パーソナライズされているので人によって異なることです。同じ言葉を入れて検索しても、その人の地域、関心、傾向の相違に合わせて検索結果も異なるので、情報流通の基盤として果たす役割もその程度と位置付けることになります。ネット情報の提供方法は、場合によっては、米国大統領選挙やBrexitをもたらした英国の国民投票の例のように、民衆分断や思想操作の道具にもなりえます。

5 過去の破産の事実にはどんな意味がある?
個人破産の制度は、債務の返済が困難になった人について、非難したり罰したりする制度ではなく、財産の限りで債権者に配当することを条件に残った債務を払わなくてよいことにし(免責制度)、ゼロ(マイナスのない状態)からのスタートを可能にすることで、破産者の経済的再生をさせようとする制度です。破産・免責により復権し、資格制限(弁護士、ガードマンになれないなど)もなくなります。免責不許可でも破産から10年経過すれば復権し(破2555号)経済的再生への道がつくられています。

破産者の経済的再生は、破産者自身のためのみではなく、その家族や社会全体にとっても意味があります。たとえば、多重債務者が立ち直れないと治安が悪化します。免責制度や復権制度を含む破産制度は、経済社会から一旦はみ出した破産者を一定の要件のもとに経済社会に復帰させる制度です。破産したという事実は、それが10年以上前であっても、その人と取引をしようとする業者にとっては意味のある情報ですが、その人の経済社会への復帰にとっては有害であり、特に破産制度の趣旨からすると、広く知らせるべき公益性のある情報とは言えないと考えられます。

6 法の適用の結果
検索結果表示と破産の事実についてこのように検討した結果、設例では、破産は「経済的マイナス情報に過ぎず、かつ、10年以上前のことなので、破産法の制度趣旨からしてもやり直しの機会が確保されるべきであり、①が②に明らかに優越すると考えられる。」としました。

7 平成29年最高裁決定を見てみましょう 
平成29年最高裁決定はIRACで書かれています。同決定が定立した一般的判断基準(R)とそれへの事実の適用(A)を原文で見てみましょう。結論としては、削除請求を否定しています。緻密な利益衡量をしていますので、そこに注目してください。

R【一般的判断基準】
検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。


A【具体的当てはめ(適用)】
児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置づけられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則を持って禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また、本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。
 以上の諸事情に照らすと、抗告人が妻子とともに生活し、…の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれるなどの事情を考慮しても、本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。


                                    



1月の【学問のミカタ】
・経済学部「きのこたけのこ戦争と巨大IT企業の違い
・経営学部「山本聡ゼミ、最優秀賞への道!!:なぜ、山本聡ゼミは学外コンテストに参加し続けたのか?
・コミュニケーション学部「学校スポーツのあり方について考える
・全学共通教育センター「目隠しと「ルサンチマン」」